ものづくり試作開発等支援補助金事業

ものづくり試作開発等支援補助金事業

平成24年度
ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金事業

事業計画名

「電力の実使用状態を監視できる、汎用多回線電力監視システムの機器開発 」

事業計画の概要

中小零細の工場では複合的に生産設備が稼働しているが、設備をどのように組み合わせれば電力ピークを抑制できるか、かつ高圧受変電設備機器の容量を軽減できるか、解析可能な多回線電力監視システムを開発する。装置は、分散リモートIOをベースに、安価で汎用的なものとする。

問題点

現在、高圧受変電設備機器(以降トランスと略す)に対して、負荷が複数接続されている場合、定格負荷の総計から、ピーク電力を計算して、トランス等の設備に必要な容量を計算している。しかし負荷の同時使用が限られている場合、ピーク電力は、想定値よりも大幅に下回り、設備が過剰となる問題がある。実際の運用におけるピーク電力を求めるには、負荷毎に電力を測定し、ここから個々のピーク電力を積算するシステムが必要であるが、現状販売されている汎用電力監視システムは、このような多回路電力監視が出来ない。

このような多回路電力監視を実現するには、開発会社にソフトウェアを含め特注しなければならず、非常に高価になるため資金に余力のある大企業の工場でないと実現できません。さらに、このようなシステムを管理する人材が必要であり、小規模工場(受電電力2000kw以下)での導入では現実的に難しいのが現状です。

目 的

多回線電力監視システムを開発、中小規模工場(受電電力2000kw以下)での各1台1台の生産設備の電力トレンドを測ることにより、使用状況と受変電設備の運用状況を把握し、効率的な設備機器の組み合わせ、受変電設備の運用の効率化、延命化を図るものである。

設備として設置や仕組み、データの扱いが簡単で汎用性のあるものとし、余分な機能を省きローコスト化と扱いやすさを図る。

解消手段1

現在の汎用電力監視システムはトランス全体の1回線を前提にしている。前期の目的を達成するのは、多回線対応の汎用電力監視システムとすること、そして個々のピーク電力を積算して、運用上想定されピーク電力を推論するアルゴリズム(個々の電力の積算値×係数)を、内蔵することである。また運用中も個々の負荷電力を監視して、想定されるピーク電力を上回るような、イレギュラーな運用がある場合、アラームを発生させる。

弊社は、多くの経験から、ピーク電力を推論するアルゴリズム(個々の電力の積算値×係数)の係数の設定ノウハウを有している。

解消手段2

多回線電力監視システムの汎用化には、センサである多数のCT(電流を計測するカレントトランスと呼ばれるセンサ)の微小信号を増幅する、多数のセンサアンプ、データ収集のためのA/D変換、PCに解析データを送るインターフェースを、コンパクトかつローコストにまとめる必要がある。特にCTアンプは微小信号を扱うため、デジタル回路からのノイズ、計測対象の誘導ノイズに強固である必要がある。またPCとの親和性、分散された多数の負荷からのデータ収集を考えると、Ethernetを使った分散リモートI/Oが適している。

○ 多数のCTセンサアンプ、A/D変換、PCインターフェースを一体化しコンパクトで安価な電子回路を開発する。

特に微小信号を扱うCTセンサアンプは、デジタル部と十分なアイソレーションを図る、またインスツルメンテーションアンプとして誘導ノイズを除去する。

この様子を以下に示す。PCインターフェースの先にはPCが接続され、データの解析を専用ソフトウェアで行う。

○ 負荷が狭いエリア集中している場合、別紙の構成(企業秘密のため非公開)でもよいが、実際には、そのようなことは少ない。

そこで、上のPCインターフェースをEthernetとし分散型リモートI/O構成とする。各ユニットのデータはPCで統合解析される。

結 果

この事業は、ピーク電力の予測に比べ過剰になりがちな設備を抑制する効果があるが、設備の余裕を把握できるので、追加の設備を新たなトランスなしに追加できるなどのメリットがある。ほかにも、多回線トレンドから、よりピーク電力を抑えた工場全体での設備運用のヒントを知ることができる。たとえばA時間のピークに対し、B時間にボトムがあれば、Bに移動可能な設備をAからシフトすることで、実際のピーク電力を軽減する。これは夏場など電力需要がひっ迫しているわが国の電力安定供給に少なからず貢献できるものと考える。

市場規模・効果

装置は、計測点数にもよるが、30万円~100万円程度を想定している。わが国の中小零細工場の数は、47万社あるので、そのうち5%に相当する、23,500箇所に、平均50万円程度のシステムが導入されると、117.5億円の市場規模になると予測される。当然、これは国内での売上げ予測であり、海外展開も考慮すると、その売上げはさらに増大する。また電力ピークを抑えられる利点は、現在、原発の大半が停止した電力需要のニーズに応え、エネルギー安全保障の一角を担う技術になると確信しています。


平成26年8月15日 機器が完成しました

この大きさで80点の計測が可能です。

画面参考

開発風景